2006年02月07日

なにも願わない手を合わせる(藤原新也/東京書籍)

藤原新也さんの写真をはじめて見たのは、たぶんなにかの雑誌だったと思う。なかでも人の死体が風景の一部になっているような写真と、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というフレーズが印象に残った。これらの写真はのちに『メメント・モリ』(情報センター出版局)という本にまとめられている。

2003年に刊行された『なにも願わない手を合わせる』という本は、型にはまった巡礼の本というわけではないし、全編が四国を舞台にしたものではないのだが、遍路という行為のある一面の、本質的ななにかが匂いたってくるような本だ。

これまでも肉親が他界するたびに四国巡りをしてきた著者は、兄の死に際してふたたび四国の地を踏む。それは自分自身の心の中に残っている死者への想いを浄化する行為だという。

「私の四国巡りというのは八十八カ所という決められたルートを形に沿って回るというものではない。私はそういう定型化された旅は苦手なのである。それはあくまで四国という風土そのものを巡るものであり、道すがら気が向けば寺を訪れるというような旅である」

そのような旅で見いだされた祈りのかたち。それは、その人自身のものであるという意味で、ホンモノの祈りと言えるかもしれない。

数十ページ読み進むごとに現れる写真ページは、ざらついた本文紙と同じ紙に刷られており、写真の質感にマッチしている。

瀬戸内の島で蝶の死の瞬間に立ち会う話には、生の(死の)不思議を感じざるをえない。群れ飛ぶアゲハ蝶のなかの一頭の老蝶が群から離れ、上空に高く舞いのぼり、命の糸が切れたように羽ばたくのをやめ落ちていった。その先を追って著者が見たものは・・・。一読してたしかめていただくしかない。

※メメント・モリとは死を想えという意味。リンク先のMement moriの項目にある写真は、人によっては衝撃を受けるかもしれないので、心の準備を。

book data:なにも願わない手を合わせる/藤原新也/東京書籍/2003年
posted by namo at 22:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 遍路本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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