2006年02月11日

遍路圖會(荒井とみ三/新正堂)

京都の下鴨神社か知恩寺の古本市で見つけたもので、昭和17年発行。当時の定価は1円80銭。

『へんろ功徳記と巡拝習俗』(浅井證善/朱鷺書房)にこの本の引用があり、昭和15年、讃岐風俗研究所発行となっているので、地方の出版物を大阪の出版社が再度刊行したものだろう。前書きは「昭和17年麦秋」となっている。

昭和17年というと、戦争中だ。テレビドラマなどのイメージで、英語など敵国語を使うことは厳しく禁じられていたというイメージがあったのだが、本書の発行されたころはまだそういった規制は及んでいなかったのか。「デパートのショウウインドなどに映つた遍路姿」といった記述が頻繁に出てくる。

四国に生まれ育った著者の文章ものんびりとした調子で、とても戦時中に発行された本とは思えない。

内容は、自筆の挿絵が趣きある「遍路の風俗」、お寺の縁起や伝説が記された「霊場八十八ヶ所めぐり」、遍路の起源や服装などについて書かれた「遍路の研究」の3章からなる。

興味深いのは、当時にしてすでに、「(四国には)平安の頃から遍土と称して既にそれらの霊場を巡拝する風習があつた。(中略)故に遍路の起源は、必ずしも今日言ふ弘法大師の霊場を巡る意ではなかつたらしいのである」という言葉や、「昔は海辺又は峻坂嶮路の土地に霊場が設けられ、それを巡歴することを正当とされていたらしい」という記述が見られることだ。

五来重氏などの研究により、遍路の起源が海洋宗教である「辺路(へじ)修行」に由来することが広く知られるようになったが、1940年くらいにこのような内容が一般向けの本に記されていたとは意外だった。

book data:遍路圖會(遍路図会)/荒井とみ三/新正堂/1942年

遍路図会.jpg
posted by namo at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 遍路本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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