2006年04月23日

親子遍路旅日記(今井美沙子/東方出版)

1981年春、夫婦と小学生の子どもの3人連れで、歩いたり乗り物を利用したりしながら、高知の31番竹林寺までまわった遍路体験記。

著者は作家で、本書は当時の毎日新聞に連載されていた記事をもとにまとめたもの。

この本のおもしろさは、著者一行の旅の体験というより、そこで出会った人に聞いた話にある。

7番十楽寺門前の茶店のおばちゃんの話は、民俗的な香りがにおい立つような不思議な話だ。

若いころ病弱で寝たり起きたりの生活をしていたとき、「ここに病人がおるな」と言って、黒い僧衣をまとい背中に「お加持、お接待」と墨書された白い布を縫いつけた男が急に入ってきた。

そして「腹ばいになりなさい」と言って、背中と腰を気合いをかけながら二、三度強く押した。

「これで身体はよくなるから、明日からここを通るお遍路さんに、『お茶、お接待。お茶あげます。まよけのお茶』と三べん言いなさい。それでお遍路さんが受け取らないときは大師が受け取るから」

僧は謎めいた言葉を残して立ち上がる。

おばちゃんは身体が楽になったことを告げ、「どこから来たお方かだけでも教えてください」と尋ねると、僧は「逆打ちじゃ!」とひとこと言って帰ってしまった。

だが、家の前の床几に坐っていた隣のおじいさんには、誰も来とらんのになんでひとりごとを言っていたのかといわれてしまう。

おばちゃんはその日から元気になり、以来三十余年、毎日お茶のお接待を続けている。

ぼくがずいぶん前に遍路をしていたときには、おばちゃん(その頃はおばあちゃん)はまだ7番の前のお店で元気にしておられた。

もうひとつ、31番竹林寺で出会った托鉢の老遍路との対話は、もっと現実的で、とても興味深い内容だ。

本文中には写真が多用され、臨場感は抜群。

book data:親子遍路旅日記/今井美沙子/東方出版/1981年

親子遍路旅日記20cm.jpg
posted by namo at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 遍路本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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