2006年06月03日

辺路から遍路へ

古来の「辺路(へじ)」が「へんろ」と読まれるようになり、「遍路」という字に移行し、固定化されていった背景には、もちろん空海の影響が考えられる。

遍路の「遍」は、空海の金剛号(密教ネーム)である遍照金剛の「遍」だからだ。

お遍路さんには「南無大師遍照金剛」というご宝号で親しまれている。

真念に依頼され『霊場記』を書いた学僧・寂本(じゃくほん)は、「へんろ」という言葉に、「ギョウニンベンに扁」の字と、「礼」という字を当てたが、普及しなかった。

「礼」という字は巡礼からとったのだろうが、「ろ」と読ませるには無理がある。「へん」のほうの字も、ちょっとどうかと思う。

やはり、「へんろ」には「遍路」がしっくりくる。

それは遍照金剛の路(みち)、空海の道だ。

そしてそこには、一遍上人(いっぺんしょうにん)の「遍」も隠されている。
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2006年05月26日

Route 88(小林キユウ/河出書房新社)

「遍路の本はすでにさまざまな種類が出ているが、僕の知るかぎりではインタビューで構成した本はこれが初めてだと思う」とエピローグで著者が述べるように、本書はユニークな遍路本だ。

基本的には、見開き2ページのカラー写真に、文字だけのインタビューページが2ページつづく構成になっている。

1人(1組)のお遍路さんに4ページが当てられており、31の写真とインタビューが掲載されている。

母子で登場するお遍路さんが1組いるので、登場するお遍路さんは32人になる。

その多くは20代の若者だ。これは、インタビューの対象として、著者が声をかけやすかったからだ。

歩き遍路、自転車遍路、バイク遍路、通し打ちに区切り打ちと、登場するお遍路さんのスタイルはさまざま。

インタビューも興味深いが、それよりまず目をひくのは写真ページだ。

その多くは、人物のアップの入った写真と、同じ場所でやや角度を変えた風景だけの写真を、1ページずつ左右に並べるスタイルになっており、見開きでひと連なりのように見えて、おもしろい効果をだしている。

著者はカメラマンで、小林紀晴とはふたごの兄弟らしい。

同じ著者による『路地裏温泉に行こう!』(河出書房新社/2005年)もユニークな本だ。温泉の世界で、讃岐うどんの製麺所タイプのお店を探すような本と言えばわかるだろうか。

book data:Route 88ーー四国遍路青春巡礼/小林キユウ/河出書房新社/2003年

Route88 20cm.jpg
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2006年05月19日

うどん 心(44番周辺/久万高原町)

讃岐うどんはたしかにおいしい。

でも、愛媛には、その土地に根づいた、そこでしか味わえないうどんがある。

久万高原町のうどん屋「心」の釜揚げうどんは、香川では味わうことのできない、唯一無二の味だ。

いちばんのちがいは、つけだしにある。

このだしには、愛媛の山間の土地ならではの伝統が息づいているように思う。

詳細は、以前紹介した「伊予うどん」の記事を見ていただきたい。

お店の雰囲気は、このホームページを見ればいちばんよくわかる。
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2006年05月12日

60番横峰寺はいちばんの難所?

遍路の体験記を読んでいると、いまだに、「横峰寺はいちばんの難所と言われている」といった記述が見られるものがある。

実際に歩き遍路を体験した人なら、どうしてこのような言葉が出てくるのか不思議に思うだろう。

歩き遍路の多くは、12番焼山寺をいちばんの難所にあげる。

もちろん、天候や一日に歩く総距離などでその印象は変わってくるが、それでも、横峰寺をいちばんの難所にあげる人は少ないだろう。

ではなぜ、このような言葉が出てくるのだろうか?

これは昔のガイドブックを読んでいたならすぐにわかる。

今から二十数年前まで、横峰寺は車で近くまで訪れることのできない唯一の札所だったのだ。

横峰寺を打つには、湯浪か石鎚農協か、どちらから行くにしても、1時間半から2時間くらい歩かなければたどり着けなかった。

車でまわっているお遍路さんも、ここだけは歩くしかなかったのだ。

歩き遍路の体験のない人が、今でも机上で一部の孫引きガイドブックをつくりつづけているため、横峰寺がいちばんの難所という記述が残る。そうして、それを読んだ人たちが、その言葉を引用して遍路体験記を書きつづる。

歩き遍路の体験記の場合には、「実際にはたいしたことはなかった」という言葉が、そのあとにつづくことになるのだが・・・。

もう20年以上前から、「横峰寺はいちばんの難所」ではない。

歩き遍路にとっても、車遍路にとっても。

※ただし、台風などで道が崩れたときは例外。これはどの札所にも言えることだが。
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2006年05月08日

四国の雑誌GajA(ガジャ)

『四国旅マガジンGajA』は、1999年から発行されており、現在は年4回発行の季刊誌。

四国以外の土地では、大型書店などには置いてあるが、どこででも見かけるような雑誌ではない。

だが、なぜかうちの近所のそんなに大きくない本屋さんにも置いてある。

遍路の特集号は、2000年春の第3号と2000年秋の第5号。第3号では徳島から高知、第5号では愛媛から香川までが紹介されている。

遍路の紹介記事のページがそれほど多いわけではないが、横山良一さんの写真と地方誌的な大胆なレイアウトでインパクトがある。

横山さんの写真は、その後『太陽』や『旅』にも掲載され、角川書店から4冊シリーズの単行本も出たが、『GajA』で見たものが、はじめてということもあってか、いちばん印象に残っている。

遍路宿や旅館の料理が並ぶページや、人物に焦点を当てた写真なども、目先が変わっていい感じだ。

写真のなかで白ヌキになった短い言葉も、雰囲気を盛り上げている。

他の号では、讃岐うどんや温泉の特集もあり、四国が好きな人にとっては魅力的な雑誌だ。

そうそう、『GajA』はJR四国がスポンサーみたいだが、同じようにJR四国がスポンサーの『どっきん四国』という季刊誌が、ずーっと昔にあった。

富田靖子の表紙で、もっと素人くさいつくりの雑誌だったけど、それなりにおもしろかった。

あまり知っている人はいないだろうけど。

ガジャ20cm.jpg
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2006年04月28日

ほっとバター(宿毛市)

遍路道は高知県の宿毛(すくも)から松尾峠をとおって、愛媛県の一本松町(現在は合併して愛南町)へとつづいている。

その先は城辺(じょうへん)町で、次は40番観自在寺のある御荘(みしょう)町になるが、ともに合併して同じ愛南町になってしまった。

宿毛から一本松まで食事処やお店はないので、宿毛で食事をすませるか、なにか食べるものを買っておいたほうがいいだろう。

宿毛を朝出発するなら、国道56号と321号が合流する北東角あたりの「ほっとバター」でモーニングがいただける。

へん保協の地図でいうと、秋沢ホテルのななめ向かいくらいになる。

小さなパン屋さんだが、少し席がもうけてあり、店内で食事できるようになっている。

ネットで調べたら、愛媛県の城辺に本店があるようだ。

朝から地元の人たちがひっきりなしに買い物に訪れていた。

窓から外を眺めながらモーニングのコーヒーを飲んでいたら、国道から分かれ松尾峠へと向かう歩き遍路の姿が見えた。

ぼくもコーヒーを飲み終えたら、そろそろ出発して峠を目指すとしよう。
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2006年04月23日

親子遍路旅日記(今井美沙子/東方出版)

1981年春、夫婦と小学生の子どもの3人連れで、歩いたり乗り物を利用したりしながら、高知の31番竹林寺までまわった遍路体験記。

著者は作家で、本書は当時の毎日新聞に連載されていた記事をもとにまとめたもの。

この本のおもしろさは、著者一行の旅の体験というより、そこで出会った人に聞いた話にある。

7番十楽寺門前の茶店のおばちゃんの話は、民俗的な香りがにおい立つような不思議な話だ。

若いころ病弱で寝たり起きたりの生活をしていたとき、「ここに病人がおるな」と言って、黒い僧衣をまとい背中に「お加持、お接待」と墨書された白い布を縫いつけた男が急に入ってきた。

そして「腹ばいになりなさい」と言って、背中と腰を気合いをかけながら二、三度強く押した。

「これで身体はよくなるから、明日からここを通るお遍路さんに、『お茶、お接待。お茶あげます。まよけのお茶』と三べん言いなさい。それでお遍路さんが受け取らないときは大師が受け取るから」

僧は謎めいた言葉を残して立ち上がる。

おばちゃんは身体が楽になったことを告げ、「どこから来たお方かだけでも教えてください」と尋ねると、僧は「逆打ちじゃ!」とひとこと言って帰ってしまった。

だが、家の前の床几に坐っていた隣のおじいさんには、誰も来とらんのになんでひとりごとを言っていたのかといわれてしまう。

おばちゃんはその日から元気になり、以来三十余年、毎日お茶のお接待を続けている。

ぼくがずいぶん前に遍路をしていたときには、おばちゃん(その頃はおばあちゃん)はまだ7番の前のお店で元気にしておられた。

もうひとつ、31番竹林寺で出会った托鉢の老遍路との対話は、もっと現実的で、とても興味深い内容だ。

本文中には写真が多用され、臨場感は抜群。

book data:親子遍路旅日記/今井美沙子/東方出版/1981年

親子遍路旅日記20cm.jpg
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2006年04月20日

遍路用の自転車選び

歩き遍路をしたいが、あまり長期の休みはとれないし、自転車なら・・・と考えておられる方もけっこう多いようだ。

自転車なら、ゴールデンウイークなど1週間くらいの休暇があれば、3回の区切り打ちで結願できる。

手持ちの自転車で遍路にまわれるならそれにこしたことはないが、ツーリング用の自転車購入を考えておられる方は、どんな自転車がいいのかちょっと迷ってしまうかもしれない。

いちばん問題となるのが、どうやって現地に自転車を持ち込むかだろう(遍路道に近い四国在住の方は除く)。

自転車に詳しい人なら、ランドナー(昔からあるドロップハンドルのツーリング用自転車)でもマウンテンバイクでも自分の好きな自転車を選んで、輪行して行けばいいのだが、はじめての人にはちょっとめんどうだ。

そこでおすすめなのが、折りたたみ自転車だ。

折りたたみ自転車を選ぶさいにポイントとなるのは、コンパクトさと走行性能だろう。

1)コンパクトさ重視なら

パナソニックのTraincle(トレンクル)に代表される、軽くて小さく折りたためるタイプが最適。

トレンクルは世界最軽量の6.5kgのTraincle6500と7.5kgのTraincle7500があるが、値段がだいぶちがうので、Traincle7500でじゅうぶんだろう。

ブリヂストンのTRANSIT(トランジット)にもスーパーライトという7.4kgの軽量タイプがある。

このタイプの自転車の利点は、乗り物に気軽に載せられるということ。

ぼくが四国で会った自転車遍路にもトレンクルを利用している人がいて、「雨なんでバスで行きます」と言って、パッとたたんでバスに乗ってしまった。荷物はほとんど自転車には積まずに、ザックをかついでいた。

この年は大雨で久礼から37番岩本寺への国道が通行止めになったりで大変だった。

2)コンパクトさも走行性能もどちらもある程度重視するなら

r&mのBD-1のようなタイプが最適。タイヤの小さい小径車なのである程度コンパクトに折りたためる。といっても、電車などに載せるにはちょっとかさばる。

新幹線などに乗るときは車両の最後列の席の後ろのスペースに置けばいい。混雑するシーズンなら指定席の車両を利用するしかない。

バスに気軽に載せる、というわけにはいかない。無理ではないけど。

走行性能はけっこうよくて、変速機もついているし、ツーリングしていても太いタイヤのマウンテンバイクなどは追い越していくくらい。

ただタイヤが小さいので、路面の状態が悪いところでは地面からの衝撃がもろに伝わってくる。

折りたたみ方は、最初はちょっととまどうかも。慣れれば30秒くらいでできる。

3)走行性能重視なら

GIANTのMR-4のようなタイプが最適。タイヤが大きいのでそれほどコンパクトには折りたためないが、それだけに乗り心地は抜群。

電車に載せるときはちょっと気をつかうかも。空いていれば全然平気だが。

比較的短時間で車で四国に渡れる地域にお住まいなら、自動車に積んで現地に入って適当な駐車場にとめ、遍路が終わったら元の駐車場所に電車などでもどるという方法もある。

     *     *     *

折りたたみ自転車のカタログ本が、えい出版や辰巳出版から出ているので、参考にしてみてはいかがだろう。


以上は、遍路用の道具としての折りたたみ自転車選びだが、これから自転車を趣味にもしていきたいという方なら、ちょっと変わった自転車を選んでみてもいいかもしれない。

イギリスの小型自動車「MINI」の開発にたずさわった人がつくったモールトンとか、ユニークなかたちのストライダとか。

「ストライダで逝こう」というホームページは、「自転車遍路の交通手段」「装備」「エリアガイド」などが見やすく整理されている。写真が楽しい。
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2006年04月18日

戒壇めぐり

戒壇めぐりとは、仏堂などの地下の暗いところを手探りでまわることで、長野の善光寺のものがよく知られている。

四国八十八カ所の札所のなかでは、35番清滝寺、51番石手寺、75番善通寺で戒壇めぐりができる。

清滝寺では大きな薬師如来像の台座の地下に戒壇めぐりがある。規模は小さく、1分くらいで出てこられるらしい。

石手寺のものはふつうの戒壇めぐりとはちょっとちがう。というか、戒壇めぐりと呼ぶのは適切ではないかも。ちょっとした狂気の世界?

善通寺の戒壇めぐりは本格的。御影堂の地下に約100メートルの暗闇のコースが続いており、科学的に再現されたお大師さんの声も聞けるとか。

個人的にはこの手のものにあまり魅かれないし、お寺のテーマパーク化というか、桂小枝的パラダイスとしてとらえていた。

だが、ちょっと考えてみると、戒壇めぐりの構造は、辺路(へじ)修行の行道(ぎょうどう)や、修験道の胎内くぐりとも似通っている。

戒壇めぐりのような俗っぽいものにも、古来の修行の伝統のなんらかの反映が影を落としているのだろうか。
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2006年04月15日

あぜち(40番観自在寺近く)

40番観自在寺を打って、門前あたりで食事をしようと思っていたのだが、どうも食事のできそうなところが見当たらない。

国道56号まで出ればお店はあるのだが、札所に着く前に通り過ぎた、おそば屋さん(うどん屋さん?)が気になったので、引き返して入ってみた。

御荘町役場のななめ向かいあたりにある「あぜち」というお店だ。

お腹もふくれないような量のもりそばで1000円近い料金をとるようなそば屋ではなく、そばもうどんもある素朴な食事処だ。

天ざるそばが800円で、けっこう豪華で食べごたえがあっておいしかった。たしか、ちょっと太めの黒っぽい田舎そばだったと思う。

夏の暑さで消耗した体に元気をもらい、今日の宿を目指してふたたび午後の歩きをはじめた。
posted by namo at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 喫茶・食事処 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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